雨のパレードを初めて聴いた時「おそるべき才能の静かな開花の瞬間を見てしまったかもしれない」と驚き、ソワソワした。明らかに楽曲の中に既に強い思想や哲学が流れていた。もう自分たちの文学が完成しているんだなという恐ろしさを感じた。
この『Tokyo』はその”おそろしさ”たるものを、彼らの文学の輪郭をはっきりさせたような音楽。切なくて情動に強く訴えかける唄声。曲自体は激しくも派手でもないのに、イヤフォン越しに聴くと強く強く鳴り響いてくる音楽。
「自分を見てくれている人は誰もいない、世界にはいま自分ひとりきりなんだ」みたいな心の淵に沈んでいく感情をうたった歌は数多くあるのに、ここまで心に届くのはなぜなんだろう。あの特有の感情を最短距離かつ最小単位で書き上げた歌、という印象。イントロから全開。自分の辛さをもっと大きく広く包むように救ってくれる音楽がこの『Tokyo』。
きっと、ボーカル福永浩平の文学の奥深さはこんなものじゃないだろうなと感じさせられた。
【Artist information】
雨のパレード オフィシャルサイト